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第四話 出会い②

last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-28 18:11:27

 宇随のことをじっと見つめる続ける雛。

 その視線に気づいた宇随が雛に近づいてくる。

「なんだよ、そんなにじっと見て。あ、もしかして、俺に惚れたのか?」

「ち、ちが」

「わかってるって。いいこと言うなぁって感動してたんだろ。

 おまえ、見る目あるよ。可愛い顔してるし、俺の子分にしてやってもいいぜ」

 宇随が調子づいて雛の肩に手を置いた瞬間、彼の体は宙に浮いた。

 雛の一本背負いが決まる。と思いきや、咄嗟に受け身を取った宇随は、完全に地面に着く前に向きを変え、華麗に着地を決める。

 周りにいた男たちは二人の突然の動きに驚き、皆その場から散っていった。

「……おまえ、すげぇな。女みたいな顔してやるじゃん」

 宇随が雛を見て嬉しそうに笑った。

 雛は宇随を睨み返す。

「あんまり舐めてると、痛い目みますよ」

「へえ、見せてもらおうじゃん」

 宇随が楽しそうに笑って、一歩踏み出そうとした。そのとき、

「やめておけ」

 突然の声に、皆がそちらへ視線を向けた。

 宇随の背後から声をかけてきた人物。

 先ほど門のところで雛と話したあの男だった。

 振り向いた宇随が驚いた顔をする。

「これはこれは……中村(なかむら)神威(かむい)さんに声をかけてもらえるなんて、嬉しいね」

 宇随は神威から間合を取る。

 神威は雛をちらっと見たが、一瞬で目を逸らした。

「ここで騒ぎを起こすと全員落とされるかもしれんぞ。いいのか」

 神威は宇随を睨みつける。

 そのオーラと迫力に皆が圧倒されていた。

 別格だ、この人は何か違う。きっと皆が同時にそう思ったはずだ。

「だな……助かった。ついノリでさ。

 ……それより、あんたと対戦できるの楽しみにしてるよ」

 宇随は神威に手を差し出す。

 神威は黙ってその手を見つめたが、その手を取ることなく変わりに雛の方を見た。

 雛は話しかけようと試みたが、さっと視線を逸らされてしまい、その機会を失ってしまった。

 神威は皆に背を向け去って行こうとする。それを追おうとする雛だったが、ふいに宇随が声をかけてきた。

「おっと、ちょっといいか」

「え?」

 雛は宇随の方へ振り返る。しかし、神威のことが気になり、雛はもう一度神威の方へ顔を向けた。

 しかし、そこに彼の姿はもうなかった。

 仕方なく、雛は宇随についていくことにした。

「さっきは悪かったな。

 俺さ、強い奴見ると、すぐやり合いたくなっちゃうだよな」

 宇随は軽く謝ると雛にも握手を求めてきた。

 雛も先ほど投げ飛ばしてしまったことは悪いと思っていたので、素直に握手に応じる。

「私の方こそ、ごめんなさい。女みたいって言われて、気にしていたからつい」

「そうだよな、本当に悪い。でもおまえマジで強いだろ?

 俺にはわかるぜ。あの身のこなし、俺を投げ飛ばすなんてさ。

 俺、おまえのこと気に入った。お互い六人の中に残れるように頑張ろうぜ」

 宇随……彼はきっと悪い人間ではない。

 そう思った私は、笑顔を見せた。

 そして、雛は先ほどから疑問に思っていたことを尋ねてみることにした。

「ところで、さっきの男性とは知り合いなんですか? 中村神威さん、でしたっけ?」

「ああ、別に知り合いではないけど、あいつ超有名人なのよ。

 地元で有名な公家の出で、さらに剣の腕前も超一流。あいつに敵うやつはもう国にはいないって話だぜ。

 俺あいつと地元が同じで、たまたま顔知っててさ」

 宇随の話だと、どうやら神威は雛とは住んでいる地区は違ったようだった。

 遠いところに住んでいるなら、ますます雛のことを知っているはずはない。

 どうしてあんな反応や視線を送ってくるのだろうか?

 雛が考え込んでしまうと、宇随がニヤニヤとした笑顔でからかってくる。

「あれ? もしかして、惚れた? まぁ、あいつモテるからなぁ。

 家柄はいいし、顔もいいだろ、それに剣の腕もピカイチときたもんだ。羨ましいね。

 しかーし! 俺はあいつに勝つぜ。

 見てろよ、俺が日本一だって証明してやる」

 張り切って気合いの雄叫びを上げる宇随に、雛は圧倒される。

 元気いっぱいで羨ましいかぎりだ。

 こういう人がいる方が、皆の士気が上がっていいのかもしれない。

 雛は微笑みながら宇随が語る自慢話にしばし耳を傾けた。

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